「小学生の甲子園」高円宮賜杯第46回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントの埼玉県大会は5月30日に3回戦8試合、翌31日に準々決勝が東松山市野球場などで行われ、吉川ウイングス(吉川)、朝霞ホーネッツ(朝霞)、上藤沢ライオンズ(入間市)、山野ガッツ(越谷)の4強が出そろった。6月6日にはさいたま市のレジデンシャルスタジアム大宮で準決勝と決勝が行われ、県代表が決定する。
(写真&文=鈴木秀樹)
※記録は編集部。全試合の結果速報ではありません
■準々決勝
◇5月31日 ◇東松山市野球場
▽第1試合
吉川ウイングス〇3対2●西埼玉少年野球

吉川ウイングスが昨秋の新人戦王者で2年連続全国出場を目指す西埼玉少年野球(飯能)に競り勝ち、5年ぶり3度目となる大舞台に一歩、近づいた。
1回表、吉川先発の松浦遥史は西埼玉の先頭打者・中村湊主将に右前打を許したものの、送りバントを狙った次打者が反則打球で倒れると、この回を打者4人でしのいだ。
その裏、吉川の二番、5年生の西田陸翔が放った当たりは相手右翼手の頭上を越え三塁打に。二死後、同じく5年生の玉井颯音が右翼前にポトリと落ちる二塁打を放ち、吉川が先制に成功した。
しかし、直後の2回表、西埼玉は六番の横田来芽が右越え三塁打を放つと、内野ゴロの間にかえって同点とし、3回には二番・清水洋の左越え三塁打と三番・會田健真の連打で勝ち越し点を奪った。
吉川の反撃は4回。この回先頭の玉井が左翼線をライナーで抜く二塁打を放つと(=写真㊦)、杉本颯斗がバントで送り、5年生の佐々木稜晟が左中間を破る適時三塁打。さらに続く進恵翔がスクイズを決め、一気に再逆転した(=写真㊤)。
吉川・松浦は4回以降を1安打1四球に抑え、西埼玉に三塁を踏ませない好投。リードを守り切って吉川が勝利を収めた。

前日に伏線!? 読みと作戦ピタリ
背番号「1」を背負う吉川・松浦が初回からテンポ良く好投(=写真㊦)。新人戦王者の西埼玉エース・渡辺桜生と見応えある投手戦を繰り広げた。
前日の3回戦では、昨年大会準優勝の東松山野球スポーツ少年団(東松山)とタイブレークにもつれる接戦を繰り広げた吉川。この一戦ではやや奇襲気味に、松浦ほどの球速はないが、コントロール抜群の西田を先発させた。「タイブレークまで行ったのは想定外でしたが」(岡崎真二監督)、松浦は5回二死からのリリーフ登板で、投球数を30球に抑えることができたのだった。
「昨日は早く家に帰って、ゆっくり休めました」という松浦は準決勝の疲れを感じさせず、「いつもより調子良かったです」と安定した投球を披露。強打の西埼玉に2点を許したものの、相手打線の積極的な打撃にも助けられ、回を追って調子を上げた。
4回以降は1安打1四球と危なげない内容で、終わってみればトータル54球の6回完投。「相手はいいピッチャー(西埼玉・渡辺)なので、負けたくないと意識しました」と、この試合の振り返る。「みんなが守ってくれるから、長打を打たれないように、低めに投げることを意識しました」
好投のエースはにこやかに、しかし淡々と試合を振り返り、勝利の喜びをかみしめていた。

「去年のこの大会で、西埼玉さんとは準決勝で当たって負けたんです。だからここは、先輩たちの思いも背負っての戦いでした。3月の別大会で対戦したときには負けていたので、選手たちに苦手意識がないかも心配でしたが…」
吉川・岡崎監督は厳しい戦いをものにし、表情を緩めた。
スタメンに4人の5年生が名を連ねる、今年の吉川。昨年準優勝の東松山に続き、王者・西埼玉を下した戦いぶりは、快進撃と呼ぶにふさわしい。
「個々の力では、向こうが上。とくに、(前日の)熊谷戦ですべての得点に絡んでいた一番打者(中村湊主将)と四番打者(渡辺)には細心の注意が必要です。仮設フェンスがなく、外野がフリーのこの会場では、抜けたら簡単に三塁打やホームランになってしまう。長打を防ぐことを最優先にしようと選手たちと話して。ピッチャーが丁寧に投げ、みんながよく守ってくれました」
点差はわずか1。最後まで1本の安打で状況が大きく変わりそうな緊張感の中、最終6回表には西埼玉先頭の四番・渡辺の放った強烈なセカンドゴロをきっちりとさばき、二死一塁からは後方にフラフラと上がった飛球を背走しながら後ろ向きに好捕と、落ち着いた守備で試合を締めくくった二塁手の城ヶ崎翔は「最後は微妙なフライで、センターが走ってくるのも見えていたけど、大丈夫、と思って落ち着いて捕ることができました」とうなずいた(=下写真㊤㊦)。


低めを意識するあまりに、ホームベース手前でワンバウンドする場面も多かった松浦の投球を、ひとつも後ろにそらすことなく、安定した守備でチームを引っ張った安保凱翔主将(=写真㊦)は「強敵の西埼玉を相手に、一体感を持って戦うことができました。4回に小玉(満春)コーチが『オレたちには実力もあるし、ツキもある。やってきたことを出すだけだ』と声を掛けてくれて、気合が入りました」と笑顔で振り返った。

6安打の西埼玉打線に対して5安打と、数では及ばなかったものの、吉川は1回に2安打、4回に3安打と、得点した2イニングに安打を集め、効率良く得点した。
「相手がコントロールの良いピッチャーでしたから、外角の球をしっかり踏み込んで、ボールを長く見て逆方向に打とう、と選手たちには話していました。長打はまあ、おまけのようなものですね」(岡崎監督)
西埼玉の長打は2本の三塁打、吉川は2本の三塁打と2本の二塁打。その4安打全てが得点に直結。結果的に、長打の数の違いが点差となり、勝敗を決めたことになる。4回に同点打となる三塁打を放ち、次打者のスクイズで勝ち越しのホームを踏んだ佐々木(=写真㊦)は「外角の球をしっかり打ち返すことができました」と対策通りの打撃に胸を張った。

「長打はおまけ」というものの、決して偶然ではない。綿密なゲームプランに基づいた打撃だったのだ。
また、準々決勝のタイブレークを「想定外」と振り返った岡崎監督だったが、逆に見れば、そのタイブレーク以外はすべて想定しての戦いだった、とも理解できる。
この大会での吉川の抽選番号は「1」。対戦表の左端に名前があり、すべての試合がその日の第1試合に組まれる。試合後、常に次戦の相手の戦いをじっくりと観察し、対策を練ることができるアドバンテージを存分に生かした戦いでもあったのだ。
とはいえ、この週末の2勝は、いずれも薄氷を踏むような1点差の勝利。全てがプラン通りに運ぶわけではないことも、痛いほど実感させられた2試合であったことも確かだ。

「昨日の東松山(野球スポーツ少年団)戦、そして今日の西埼玉戦と、最大の難関と考えていた2試合に勝つことができました」
岡崎監督が表情を引き締める。
「しかし、一昨年と昨年は、どちらも決勝進出を果たせず、3位で終わっています。今回も勝ち上がったチームはすべて強い。ここで安心することなく、緊張感をもって次の試合に備えます」
5年ぶりの全国切符まで、あと二つ。勢いに乗る吉川ナインだが、決して油断することなく、最終日の2試合に一丸で臨む。
無念…西埼玉は切り替えて次へ

昨秋の新人戦に続く県大会制覇、そして昨年に続く2年連続2度目の全国大会出場を目指した西埼玉少年野球の戦いは、ベスト4目前で終了となった。
「力が入りすぎていましたね。あれだけポップフライを打ち上げてしまっては…」
綿貫康監督はサングラスを外すことなく、淡々と振り返った。
「ただ、選手たちの成長は感じられた、ここまでの戦いでした。エラーではなく、打ち負けてしまったのですから、仕方がない」
違いを探すならば、万全に近い状態で完投した吉川・松浦に対し、前日、熊谷グリーンタウン(熊谷)とタイブレーク8回まで戦った3回戦で、投球制限近くまで投げ切ったエース・渡辺(=写真㊤)にやや疲れが見えたことか。60球に近づいた4回に2本の長打を許してしまった。

「これがあるんですよねぇ。やはり、マックは怖い」
そうしみじみと話した指揮官は、選手たちに向かっても、淡々と言葉を投げかけた。
「高い打球を打ち上げても勝てないぞ、と話したと思う。分かったよな。これも教訓だ。ここまでよく戦ったと思う。ご苦労さま」
もちろん、これで全てが終わるわけではない。
「今後はスポ少の県大会と、ミズノドリームカップとポップアスリートと…。切り替えて臨むだけです」
負けてなお強し。新人戦王者は気持ちを切り替え、次の戦いへと進む。
初出場の朝霞がサヨナラ満塁弾!
▽第2試合
朝霞ホーネッツ〇10対9●西堀ファルコンズ
※タイブレーク6回
朝霞ホーネッツは1回裏から打線が爆発。先頭の馬場海翔が左翼へ三塁打を放つと、木田悠利の右前適時打で先制。さらに四番・岩重陽己主将が左翼に三塁打、五番・駒田研人が左翼に二塁打を放ち、3点を先取。2回裏にも連続死球から三番・山本悠太の左前適時打などで2点を加えた。
しかし、5点を追う西堀ファルコンズ(新座)は3回表に中村悠馬、佐藤正次の連打などで2点を返すと、5回には佐藤が左越えの三塁打を放ち、田口朝陽も左中間を破る三塁打。さらに5年生の渡辺颯太、山崎蓮も連打で続くなど、この回4点を奪って逆転。制限時間を過ぎたその裏に朝霞が1点を返し、決着はタイブレークに持ち込まれた。
延長6回表、西堀は三沢斗真が適時打を放つと、四死球も加わるなど3得点。しかしその裏、朝霞は絶体絶命の二死満塁から山本が満塁本塁打を放ち、サヨナラ勝ちを収めた(=写真㊦)。

創部7年、県大会初出場の朝霞が4強入りの快挙。山本貴宏監督は「いやあ、シビれました」と喜び、「ファルコンズさんとは何度か対戦したことがありますが、一度も勝ったことがなかったんです。ここで勝てるとは」。続けて「ただ、ここまで勝てると思ってなかったから、(最終日の)6日に出張を入れてしまっていまして…」と笑った。
劇的なサヨナラ満塁弾に加えて、剛速球が目を引くピッチングでも躍動した山本は「最終回の打席は、ホームランを狙って打ちました。最後は夢中でホームに滑り込んで…。最高です!」と笑顔だった。
無念の涙。スーパープレーの女子主将は…

序盤の5失点から、一度は逆転に成功した西堀。かつて秋の新人戦では優勝経験もある実力チームが、ベスト8で涙。和久本契監督は「残念。勝って吉川ウイングスさんと戦いかたっかたなあ…」と天を仰いだ。
先発のマウンドに加え、交代後も遊撃で好守備を連発した和久本帆華主将(=写真㊤)は女子選抜の新座ガールズでも活躍、男子と交じった新座選抜チームでも主将を務める逸材。3回には味方左翼手が飛び込み、後逸した飛球を素早く回り込んでバックアップし、きっちり補殺してみせるスーパープレーも披露した。
惜敗の試合後には止まらない涙をぬぐいながら、「みんな諦めずに打って、守って戦えました」と和久本主将。「5点差を逆転して、実力は出せたのかなと思います」とほんの少し、笑顔ものぞかせた。
上藤沢が新人戦に続き4強
▽第3試合
上藤沢ライオンズ〇6対4●上尾少年野球
※5回時間切れ

新人戦出で4強入りの上藤沢ライオンズが、今大会でも躍進。大型選手がそろう地区選抜チームの上尾少年野球(上尾)に打ち勝ち、見事に最終日にコマを進めた。
3位入賞を果たした新人戦では「たまたまですよ」と謙遜していた星修二監督だったが、「選手たちがよく頑張ってくれています。新人戦の成績も間違いなく、自信になっていますよ」と、ナインの成長に目を細めていた。
山野が快勝!2年ぶり夢舞台へ
▽第4試合
山野ガッツ〇11対5●栄和クラブ
※5回時間切れ

山野ガッツは1回表に一番・孫山知幸主将の左翼線二塁打にはじまり塩見理人、茂原直常の三塁打、冨田真平の二塁打、吉岡泰平、秋山侑輝の安打など、打者10人の猛攻で6得点。ここまで大量得点で勝ち上がってきた栄和クラブ(浦和)も四番・𠮷岡愛之助が左中間に2点三塁打を放つなど3点を返したが、山野は「打ち合いは望むところ」とばかりに4回に1点、最終回となった5回にも4点を加えて栄和を振り切り、勝利を挙げた。
山野・瀬端哲也監督は「打つ方は良くなってますよ」と打線には自信も、「ただ、年明け以降はケガ人が出て、ここまでベストメンバーでは戦えてなかったんです」。最終日にはようやく、全員がそろうようで、「期待したいですね」。孫山主将は「みんなミスなく、一丸で戦えてます。サイコーです!」と元気いっぱいだ。
■3回戦
◇5月30日 ◇東松山市野球場
吉川がタイブレーク勝ち!
▽第1試合
吉川ウイングス〇2対1●東松山野球スポーツ少年団
※タイブレーク7回
抜群のコントロールで、ストライク先行の好投を続ける吉川ウイングス先発の5年生・西田陸翔(=下写真㊤)と、コントロール良く緩急巧みな投球をみせる東松山野球スポーツ少年団先発・戸口瑞喜(=下写真㊦)による、息詰まる投手戦。3回裏、吉川は左前打の西田を玉井颯音が左越え適時二塁打でかえし、5年生コンビで先制点を挙げた。追う東松山も直後の4回表、須藤旭陽の左前打と戸口の右翼線三塁打で追いついた。


吉川は4回以降、得点圏に走者を進められなかったものの、守っては5回表、一死満塁のピンチで東松山の勝ち越し走者をけん制で刺すなど好プレーで追加点を許さず、1対1のまま、勝負を無死一、二塁開始のタイブレークに持ち込んだ。東松山の攻撃をゼロでしのいだ7回裏、吉川はバントと申告敬遠で1死満塁とし、5年生・阿部稜央のスクイズでサヨナラ勝ちとなった。
サヨナラスクイズの阿部は「緊張したけど、バントは自信がありました」とニコニコ。5回にはけん制から東松山の勝ち越しを防ぐなど、冷静なプレーが光った捕手の安保主将は「慌てずに練習通りのプレーができました。この流れを大切に、明日も勝ちたいです」と話した。

壮絶な打ち合い! 西埼玉が制す
▽第2試合
西埼玉少年野球〇10対9●熊谷グリーンタウン
※タイブレーク8回
西埼玉は1回裏、先頭の中村湊主将が安打で出塁、二死後に四番・渡辺桜生の適時打で先制。3回にも中村湊主将の安打と渡辺の適時打で1点を追加(=下写真㊤)、5回にも1点。一方、西埼玉・渡辺の制球良く緩急巧みな投球の前に、5回までゼロ行進の熊谷だったが、最終6回に神山隼輝の内野安打と長濵大翔の右越え適時三塁打で1点を返すと、さらに大貫真一郎主将、5年生・荒木陽向の適時二塁打で同点に追いついた(=下写真㊦)。


タイブレークでは、熊谷が7回表に神山の2ランなどで3得点も、西埼玉も3得点。8回にも中島聖翔の左翼線三塁打などで3点を挙げた熊谷だったが、その裏、西埼玉が鈴木聖絆の安打と5年生・相川爽汰の適時三塁打などで追いつくと、規定により抽せん決着かと思われた二死三塁、二番・清水洋が意表を突くセーフティースクイズを決めて接戦に終止符を打った。

好投に加えて、3安打3打点と攻守でチームを引っ張る活躍を見せながら、6回表途中の降板後はベンチから仲間を見守るしかなかった西埼玉・渡辺は「仲間を信じていました。勝ててよかった」と笑顔。サヨナラバント安打の清水は「相手は警戒していなかったから、いけると思っていました」と胸を張った。
最後は得意の打撃戦に持ち込みながら勝利を逃した熊谷・斉藤晃監督は「守れなかったですね。最後は守備の差です」と静かに振り返った。